Web会議の増加に伴い、多くの企業で「会議室が足りない」「周囲の雑音で集中できない」といった音のトラブルが深刻化しています。その解決策として今、急速に導入が進んでいるのが「オフィス向け個室ブース」です。
今回は、個室ブースのメリット・デメリットをはじめ、失敗しない選び方の基準、見落としがちな消防法リスク、費用相場まで徹底解説します。自社に最適な一台を見つけ、快適なオフィス環境を整えましょう。
なぜ今、オフィス向け個室ブースが注目されているのか?

近年、多くの企業がこぞって「オフィス向け個室ブース」を導入している背景には、働き方の多様化と、それに伴うオフィス環境のミスマッチがあります。主な理由は以下の3つです。
ハイブリッドワークの定着とWeb会議の日常化
出社とリモートワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」が一般的になり、社内外とのコミュニケーションの多くがオンライン(ZoomやTeamsなど)へ移行しました。これにより、以前は対面で行っていた1対1の商談や打ち合わせも「各自のデスクからWeb会議で行う」のが日常となり、オフィス内で深刻な“会議スペース不足”が起きています。
オープンオフィスが抱える「音」のストレス
仕切りが少なく開放的な「オープンオフィス」は、社員同士の交流を促す一方で、「周囲の話し声がうるさくて自分のWeb会議に集中できない」「自分が話す声が周りの迷惑になっている気がする」といった、新たな音のトラブルを生み出しました。パーテーション(間仕切り)だけでは防げないこの「音のストレス」を解消する手段として、遮音性の高い個室ブースが求められています。
セキュリティ・機密情報保護(プライバシー)の強化
オープンな空間でのWeb会議は、画面に映り込む資料や、会話から漏れる「顧客の個人情報」「社外秘のプロジェクト内容」など、情報漏洩(セキュリティリスク)と隣り合わせです。また、人事面談や 1on1(定期的な個別面談)など、1対1でプライベートな話を安心して行えるクローズドな空間を確保するためにも、個室ブースの重要性が急速に高まっています。
オフィスに個室ブースを導入する4つのメリット

オフィス向け個室ブースの導入は、単に「Web会議の場所を増やす」だけでなく、働く環境そのものを大きくアップデートする多様なメリットをもたらします。
メリット1:Web会議の質とセキュリティの大幅な向上
個室ブースの一番のメリットは、優れた遮音性と防音性です。ブース内は外の雑音が遮断されるため、マイクが周囲の声を拾うことなく、クリアな音声でスムーズに商談を進められます。また、中の声が外に漏れる心配もないため、顧客の個人情報や社外秘のプロジェクトといった機密性の高い内容も安心して会話できます。これにより、意図しない情報漏洩リスクを大幅に低減できます。
メリット2:業務の生産性向上(集中スペースの確保)
個室ブースはWeb会議だけでなく、1人で黙々と作業を進めたい「ソロワーク用スペース」としても絶大な効果を発揮します。周囲の視線や電話のベル、同僚の話し声から完全に隔離されるため、深い集中状態に入りやすくなります。提案書の作成、データの分析、デザイン業務など、高い集中力を要するタスクを短時間で仕上げたいときに最適な環境を提供できます。
メリット3:会議室不足の解消とスペースの有効活用
従来のオフィスでは、「1人のWeb会議のために4〜6人用の会議室が1時間占有される」という非効率なスペースの無駄使いが多発していました。オフィス向け個室ブース(1人用)を導入すれば、Web会議の需要をブース側で吸収できるため、本来の大人数用会議室が適切に空くようになります。オフィスの限られた床面積を、無駄なく最大効率で活用できるようになります。
メリット4:大がかりな内装工事が不要(コストと手間の削減)
新しく「1人用の会議室」を壁を立てて新設しようとすると、設計から施工、電気工事など、大がかりな内装工事が必要になり、多額の費用と数週間以上の工期がかかります。一方で、家具として設置できる可動式の個室ブースであれば、製品が届いたその日、あるいは数日間の組み立て作業だけで設置が完了します。退去時の原状回復コストも抑えられるため、賃貸オフィスでも導入しやすいのが大きな利点です。
導入前に知っておくべき注意点とデメリット

オフィス環境を劇的に改善してくれる個室ブースですが、決して安い買い物ではないからこそ、事前の注意点やデメリットもしっかりと把握しておく必要があります。導入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、以下の3つのポイントを必ずチェックしておきましょう。
デメリット1:設置スペースの確保と「オフィスの圧迫感」
1人用であっても、個室ブースはそれなりの床面積と高さ(一般的に2m以上)があります。そのため、設置場所によってはオフィスの動線を塞いでしまったり、窓からの光を遮って空間全体に強い圧迫感を与えてしまったりすることがあります。
また、設置する際はブースのドアを開閉するためのスペース(可動域)も計算に入れてレイアウトを設計しなければなりません。
デメリット2:本体価格以外にもかかる初期費用と維持コスト
個室ブースの導入には、製品そのものの代金(本体価格)だけでなく、以下のような「目に見えにくい諸経費」が必ず発生します。
- 配送費・搬入費:重量があるため、特殊な運搬費用がかかるケース。
- 組立・設置費:専門の職人による組み立て作業費(半日〜1日)。
- 電気・通信工事費:ブース内にLANケーブルや電源を引き込むための費用。
また、定期的な換気ファンの清掃や、故障時のメンテナンス費用など、運用を続けるための維持コストも考慮しておく必要があります。
デメリット3:法律(消防法・建築基準法)による設置制限
これが導入において最も注意すべきハードルです。
特に天井まで完全に塞がっている「完全密閉(クローズド)型」のブースは、法律上「独立したひとつの部屋」とみなされるケースがほとんどです。そのため、オフィスの天井にある既存の火災報知器やスプリンクラーだけでは不十分とされ、ブース内部への自動消火装置や煙感知器の追加設置が義務付けられることがあります。これらを怠ると違法設置になってしまうため、ビルオーナーや管轄の消防署への事前確認・申請作業が必須となります。
失敗しない!オフィス向け個室ブースの選び方 5つの基準

オフィス向け個室ブースは、国内外の多数のメーカーから多様なモデルが販売されています。価格や見た目だけで決めてしまうと、「思ったより音が漏れる」「圧迫感があって社員が使ってくれない」といった失敗に繋がりかねません。自社に最適な一台を見極めるための5つの基準を押さえましょう。
基準1:用途に合わせて「密閉度(タイプ)」を選ぶ
個室ブースは、天井の有無によって大きく2つのタイプに分かれます。用途に合わせてどちらが適切かを選びましょう。
- 完全密閉(クローズド)型
天井まで完全にパネルで塞がれているタイプです。防音・遮音性が非常に高く、機密性の高いWeb会議や面談、高い集中力を求める作業に最適です。
- 半密閉(セミクローズド)型
天井部がオープンになっている、または格子状になっているタイプです。完全密閉型に比べて防音性は落ちますが、こもり室のような安心感があり、手軽な作業スペースに向いています。また、消防法の制限を受けにくいという大きなメリットがあります。
基準2:遮音性・防音性能(dB値)を確認する
「中の声がどれくらい外に漏れないか」「外の雑音がどれくらい遮断されるか」は、製品の「dB(デシベル)低減値」で確認できます。
一般的なオフィスでWeb会議の音漏れを防ぐには、「-30dB〜-35dB」以上の遮音性能を持つ製品を選ぶのがひとつの目安です。メーカーの仕様書やパンフレットに記載されている実験データを必ずチェックしましょう。
基準3:サイズと内部の快適性(設備)
利用人数(1人用、2人用、4人用など)はもちろん、ブース内部の環境が「長時間快適に過ごせるか」も重要です。以下の設備が充実しているか確認してください。
- 換気システム:密閉空間は熱や二酸化炭素がこもりやすいため、高性能な換気ファンが必須です。
- 照明・調光:画面映りを良くするためのLED照明や、好みの明るさに調節できる調光機能があると重宝します。
- 電源・配線周り:コンセント、USBポート、LANポートの数と位置が使いやすいか。
- 家具の有無:デスクやチェアが固定されているタイプか、自前のオフィスチェアを持ち込めるスペースがあるか。
基準4:デザインとオフィス全体の調和
個室ブースは存在感があるため、オフィスのインテリアを大きく左右します。
洗練されたスチール調、温かみのある木目調、明るいカラーリングなど、自社のオフィスデザインのコンセプトにマッチするものを選びましょう。外壁だけでなく、内装のカラーを選べる製品も増えています。
基準5:導入方法(購入 vs レンタル・サブスク)
予算や今後のオフィス移転計画に合わせて、契約形態を選びます。
- 購入(資産化):長期的に利用することが確定しており、一括で費用を支払える場合にトータルコストを抑えられます。
- レンタル・サブスクリプション:初期費用を大幅に抑え、月額料金で導入できます。「まずは2台テスト導入したい」「組織の拡大に合わせて台数を柔軟に変動させたい」という企業に最適です。
【超重要】個室ブース設置と「消防法」の壁

オフィス向け個室ブースを導入する上で、避けて通れないのが「消防法」のクリアです。近年、天井が閉まった完全密閉型のブースは大人気ですが、これをオフィス内に設置すると、法律上「新たな部屋(室)」が作られたとみなされるケースがほとんどです。
適切な手続きを行わずに設置すると違法状態となり、消防査察で是正勧告を受けるリスクがあるため、以下の3つのポイントを必ず押さえておきましょう。
天井の有無で変わる消火・警報設備の設置義務
- 完全密閉型(天井あり)の場合
ブース内が独立した空間になるため、万が一の火災時にオフィスの天井にある既存の煙感知器やスプリンクラーが作動しません。そのため、原則としてブース内部にも「火災報知器(感知器)」や「スプリンクラー(または自動消火装置)」の設置が必要になります。
- 半密閉型(天井なし・スリット状)の場合
天井が開口している、あるいは一定以上の隙間があるタイプは、消防法上の「室」とみなされないケースが多く、追加の設備工事が不要になる傾向があります。
「自動消火装置付きモデル」の選択がスムーズ
後からオフィスの天井配線を分岐させてブース内に火災報知器を引っ張ってくる工事は、多大な費用と時間がかかります。
この問題を解決するため、最近では最初からブースの天井に「自動消火装置(製品名:ケスジャンなど)」や「単独型の火災警報器」が標準装備またはオプションで組み込める製品が主流になっています。これらを選ぶことで、大がかりな工事を回避しやすくなります。
導入前の「事前相談」と「届出」のステップ
トラブルを防ぐため、製品を購入する前に必ず以下の手順を踏んでください。
- ビル管理会社・オーナーへの相談:ビル全体の消防設備(スプリンクラーの作動条件など)に関わるため、まずは設置の可否を確認します。
- 管轄の消防署への事前相談:設置したいブースのパンフレットやオフィスの図面を持って、管轄の消防署へ行き「この製品をここに置く場合、追加の消火設備は必要か」を確認します(※判断は自治体や消防署によって異なる場合があります)。
- 設置後の届出:設置完了後、必要に応じて「防火対象物変更届」などを消防署に提出します。
費用相場と導入プロセスの目安

オフィス向け個室ブースの導入には、製品本体の価格だけでなく、運搬や設置に伴う諸経費が発生します。検討から設置完了までの費用感とスケジュールの目安を把握しておきましょう。
① 費用相場(1人用ブースの目安)
導入にかかる費用は、ブースの防音性能や消火設備の有無、契約形態によって異なります。以下は1人用ブースを「購入」する場合の一般的な相場です。
- 製品本体価格:約40万円 〜 120万円(ローコストな半密閉型から、高性能な完全密閉型まで幅があります)
- 配送・搬入費:約5万円 〜 10万円(重量物のため、エレベーターの有無や階数、養生の有無で変動します)
- 組立・設置費:約5万円 〜 15万円(専門の作業員による組み立て工賃です)
- 消火設備・申請費用:約5万円 〜 15万円(自動消火装置のオプション代や、消防署への申請サポート費用など)
※初期費用を抑えたい場合は、月額2万円〜5万円程度で利用できるレンタル・サブスクリプションという選択肢もあります。
② 導入プロセスの目安(期間:約1ヶ月〜2ヶ月)
発注から設置までは、法律関係の確認を含めて一般的に1ヶ月〜2ヶ月程度の期間を見ておく必要があります。
要件定義・製品選定(1〜2週間)
設置目的(Web会議用、集中作業用など)を明確にし、台数や設置場所を決定。メーカーから見積もりを取得します。
ビル管理会社への確認・消防署への相談(1〜2週間)
ビルオーナーへ設置の許可を取り、管轄の消防署へ図面を持って事前相談に行きます。
発注・製造(2週間〜1ヶ月)
仕様を確定させて正式発注。製品によっては納期に時間がかかる場合があります。
搬入・設置工事(半日〜1日)
専門業者による組み立て、電気配線、消火装置の設置を行います。通常は1台あたり数時間〜半日で完了します。
まとめ:最適な個室ブース選びで快適な次世代オフィスへ

オフィス向け個室ブースは、現代のWeb会議不足や音の課題を解決し、生産性を引き上げる強力なツールです。しかし、防音性やコストだけで選ぶと、設置後の圧迫感や消防法への抵触といったトラブルを招きかねません。
導入の際は、利用目的を明確にした上で、契約形態やビル・消防署への事前確認まで視野に入れることが大切です。自社に最適なブースを選び、誰もが快適に働ける次世代のオフィス環境を実現しましょう。
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